1.はじめに

近年、道路信号灯が電球式から省エネ、長寿命性能に優れるLEDに急ピッチで取り換えられている。半面、色覚異常者からは電球式では明るさの差で区別がついていたのが、LEDではかえって見えにくくなり、特に黄と赤の区別がつきにくくなったという問題が指摘された。灯色ごとにそれぞれの形や大きさを変えるなど国際的にも様々な方式が試されたが、未解決のまま普及が進んでいる。
100mの距離で信号灯の色の識別が可能であることが国際照明委員会(CIE)の求める基準であるため、多くは黄のLED輝度を他の色の1.5(日本)~2.5(CIE)倍にして区別することが世界的に行われている。しかし赤が最も重要であるという一般認識と食い違うため、本研究では色覚異常者が識別可能となる「×」印を赤色灯に施して黄と赤の区別をつけ、健常者にはその仕掛けたる「×」印が見分けられない(見える必要がない)赤色信号灯を開発した。10余年の開発期間の進化形態を示して実用化に至るまでの経過を紹介する。

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